CorelDRAW X3 解説書
拙著「CorelDRAW X3オフィシャルガイドブック 基礎テクニック編」が、発売になりました。私にとっても、CorelDRAW 8以来の解説書です。
- 著者: 黒住浩司
- 出版: カーネルメディア
- ISBNコード: 4-903420-03-5
- ページ数: 416ページ(カラー128ページ)
- 価格: 4,410円(税込)
- 発売日: 2006年9月12日
なお、本書をセットにしたCorelDRAW Graphics Suite X3も発売されます(註1)。
- CorelDRAW Graphics Suite X3 オフィシャルガイドブック付き
- 価格: 59,955円(税込)
- 発売日: 2006年9月22日
装丁
表紙にはX3のマスコットである、カメレオンのカルロス君が(厚かましく)陣取っていますが、これは私の趣味ではありません。私の趣味は、山椒魚です。本書が、コーレル社公認の「オフィシャルガイドブック」であるため、同社の意向により、このような装丁になったまでです。「オフィシャル」を冠さなければ内容をごまかせないような、薄っぺらの本ではないのですが(実際、416ページもあります)、営業上、仕方ないことのようです。なにせ、国内でCorelDRAWの知名度は芳しくないのですから...。
ほんとうは、カメレオンでも山椒魚でもなく、私は猫の表紙にしたかったのですが、却下されました。ちなみに、本書表紙のために描き下ろしたイラストが、「ハナちゃんの想い出 その9」だったのです。掲載できなくてごめんね、ハナちゃん。また、書名もいつのまにか、著者に断りなく決定していました。ちなみに、私の最終案は「CorelDRAW X3 基礎講座」です。まあ、大差は無いですけどね。表面的には、そうした無念や怨念が残る本ですが、中身の解説の方は、もちろん自信作です。
主な内容
本書は、CorelDRAW X3の解説書です。PHOTO-PAINT X3やCorel CAPTURE X3は、対象としていません。主要には以下の3章で構成されています。
- PART-3 新機能と改良
- PART-4 基本操作ガイド
- PART-5 イラストの作成
新機能と改良
この章では、CorelDRAW X3の新機能と機能拡張を詳解しています。Corel本社もしくはコーレル社のサイトやパンフレット等で紹介されているものよりも、当然、詳しい内容です。
基本的には、Corel社の「CorelDRAW Graphics Suite X3 Reviewer's Guide」(英語、PDFパンフレット)を基にして、それぞれの機能を確認した上で紹介しています。また、同資料に触れられていなくても、X3英語版を半年近く使い続けている中で確認した機能や、Corel社ニュースグループなどで触れられていたものなども検証し、追加しています。
まあ、当サイトの「CDGS X3 新機能/拡張」のうち、CorelDRAWの分をピックアップして、少しだけ詳しくしたような内容です。
基本操作ガイド
この章では、セットアップから始めて、CorelDRAWの起動、インターフェイス、基本図形オブジェクトの作図方法、オブジェクトの編集方法、ファイル操作、そして印刷と、基本的な操作の流れに沿って機能を解説しています。
それぞれの項目について、詳細に解説しているのは当たり前ですが、あらかじめお断りしておくと、CorelDRAWのすべての機能については触れていません。また、PowerTraceのような新機能についても、敢えてピックアップすることはしていません。あくまでも、CorelDRAWを扱う上での、基礎的な操作についてのみ、取り上げています。
イラストの作成
この章では、曲線オブジェクトの編集と作図方法――すなわちベジェ曲線の操作方法について、扱っています
内容は、
- 基本図形からイラストを描く
- ベジェ曲線で直接描く
の2つに大きく分け、「1」は基本図形を合成した上で、その曲線をベジェ曲線の操作方法で編集するというものです。「2」は、直接ベジェツールで曲線を描く方法を、基本から取り上げています。ともに、練習用サンプルファイルを使って学ぶ、「講義」スタイルを取っています。
基本図形からイラストを描く
「基本図形からイラストを描く」では、
- 文書を新規作成
- トレース用画像(猫の写真)の読み込み
- レイヤの使用
- 基本オブジェクト(楕円形)で構図を作成
- オブジェクトの合成(ウェルド)
- 合成したオブジェクトのパス編集で猫の輪郭を作成
- 猫の模様を基本オブジェクトで合成(インターセクション)、パス編集
- 特殊効果(ドロップシャドウ、等高線、エンボス)の試用
- 印刷
という手順を通して簡単な猫のイラストを描き、ベジェ曲線の編集方法に慣れることができるようにしています。また、その合間には、いくつかのオブジェクト操作に関する基本テクニックを、忍ばせてあります。
ベジェ曲線で直接描く
「ベジェ曲線で直接描く」では、
- ベジェツールで直線セグメントを描く
- ベジェツールで曲線セグメントを描く
- ベジェツールで尖化ノードを切り替えながら曲線セグメントを描く
- ベジェツールで対称化/スムーズ化ノードを切り替えながら曲線セグメントを描く
- ベジェツールで直線/曲線(尖化/対称化/スムーズ化)が複合したパスを描く
- 猫のイラストをベジェツールで描きなおす
- 複雑な模様の写真をベジェツールでトレースする
といったステップで、ベジェ曲線の描画を習得できるようにしています。
もともと、この内容は、私が職業訓練で教えている、Adobe Illustratorの基本操作についての講義を、CorelDRAWに差し替えたものです。もちろん、単にIllustratorの“真似”をしているわけではありません。訓練校の講義自体、私がCorelDRAWで得た技術をIllustratorに差し替えたものなので、巡り巡って本来の講義内容になったというわけです。一方で、実際の授業の中で講義の中身を研鑽、向上させてきたので、そうした成果は本書に還元されています。一般的に、ベジェ曲線の操作は難しいとされていますが、なるべくそれを体験的に学習できるように努めたつもりです。
本書の目次を見ると、「PART-5」は上記の2項目しかサブタイトルに掲げられていませんが、この部分で88ページを費やしているように、実質的に「基本操作ガイド」とともに本書の中核を成しています。
CorelDRAW関連の解説書は、最近では同じカーネルメディアから「CorelDRAW Essentials 2オフィシャルガイドブック」が刊行されていますが、同書と本書では、その趣は大きく異なっています。本書は、「CorelDRAW Essentials 2オフィシャルガイドブック」のような、作例主体の操作ガイドではありませんので、ご注意ください。また、文章量も格段に多くなっています。もちろん、ほとんどの項目には、CorelDRAW X3で作図した詳細な図解も入れてあるので、ご安心ください。
図解見本
以上の内容で、本書の約400ページを埋め尽くしてしまったので、インタラクティブツールなどを使った応用的な操作や、テキストレイアウトやカラー分解などのDTP操作、Web画像/ページ作成といった部分には触れていません。基本操作とベジェ曲線操作の習得に、ターゲットを絞ったものになっています。
制作秘話
ページ数が無限であるなら、例えば作例紹介として、プレゼンテーション資料「トラストDE」の作成手順(実は、すでに作成済みなのですが...)のようなものを載せたかったのですが、今回は割愛しました。また、先ごろ公開した「CorelDRAW X3 新機能ツアー①」や「Flashエクスポートの探求」も、実は本書の構想に入っていたのですが、収まりきらないのでWeb上で放出した次第です。
実は、さらに以前からの構想として、CorelDRAW全機能のコマンドリファレンスも企画していたのですが、「ファイル」メニューの項目を途中(「送る」コマンド)まで執筆したところ、それだけで3万字を超えてしまいました。全コマンドとツールを網羅しようとすると、一冊の本でも収るかどうかといった具合なので、やはり今回は断念しました。
私自身の姿勢としては、質の面でいい加減なものや、妥協した内容のものは作る気がないので、今回は、「基礎テクニック」としてまとめられるものを、その内容を減ずることなく掲載しました。特に、「ベジェ曲線で直接描く」は、ほんものの「基礎講座」(それを本書のタイトルにしたかったのですが...)として、役立つ内容になっていると思います。
とにもかくにも、CorelDRAW 8以来、7年ぶりで本格的な解説書を執筆できたことは、よかったと思います。そして、当時としては何よりも詳しかった拙著「CorelDRAW 8J DESIGN GUIDE」ですが、私のCorelDRAWに対する造詣は、より深くなっています。それが今回の解説書で、読者の方のお役に立つことを願っています。
サンプルファイルのダウンロード
「PART-5 イラストの作成」に必要なサンプルファイルは、以下のサイトからダウンロードできます。
サンプルファイルは、本書の練習目的でのみ、使用できます。また、CorelDRAW形式のファイルは、すべてX3専用です。旧バージョンでは、これらのファイルを開けません。もちろん、サンプルファイルを見ただけでは、何を練習すればよいのかは分かりませんので、本を買ってください。