Karel Čapek
Válka s mloky
小説「山椒魚戦争」は、チェコの作家カレル・チャペックが1936年に執筆した作品です。
偶然に発見された海棲山椒魚が、労働力として人類に利用され始めます。これを契機として急速な進化を遂げた山椒魚は、人類を凌駕する知的生命体への道を歩んでいきます。
「山椒魚戦争」の主人公であるアンドリアス・ショイフツェリは、知性を持ち、人間が提供する道具や武器も扱うことができる、優れた山椒魚の種族です。通称は「ポリネシアオオサンショウウオ」、「クリプトブランクス・ディンケリ・エレクトゥス」が学名です。
アンドリアス・ショイフツェリは、スマトラ島近くのタナ・サマ島で細々と生息していたところを、カンドン・バンドン号のJ・ヴァン・トフ船長によって発見されました。ヴァン・トフ船長は、真珠の採取と交換に、彼らに天敵のサメを退治する武器の供給を約束。さらにヴァン・トフ船長は、近隣諸島への移住を手助けし、彼らは生息域を拡大していきました。
ヴァン・トフ船長死後、増殖したアンドリアス・ショイフツェリを労働力として活用することを、船長の旧知で彼の真珠採取事業の出資者でもあったMEAS社社長、G・H・ボンディが発案。山椒魚の飼育・訓練・輸送・販売から関連物資の供給を独占的に手掛ける、「山椒魚シンジケート」を設立しました。
以降、アンドリアス・ショイフツェリは全世界に販売され、港湾工事から埋め立て、海底要塞建築や海岸線防衛などの軍事利用、さらには大陸の造成による地球改造といった、人類の野望に貢献します。同時に彼らは、その人口を爆発的に拡大させていきました。この結果、アンドリアス・ショイフツェリのための農・工業製品の生産も増加。国を問わず人類の産業は、アンドリアス・ショイフツェリへの依存によって成長を持続することになります。
そうした「山椒魚時代」の栄華もつかの間、進化の階段を駆け昇り、膨大な人口を抱えるに至ったアンドリアス・ショイフツェリは、チーフ・サラマンダー(山椒魚総統)の下、生活圏拡大のために海岸線の拡大を要求、すべての大陸で陸地の水没事業を推し進めていきます。
ここに至っても人類は、自国の権益擁護に固執して結束することができず、一方で山椒魚依存経済を維持するために、アンドリアス・ショイフツェリへの食糧供給だけでなく、水没事業への資材販売を止めることはできませんでした。
山椒魚との進化の競争に、人類は遂に敗北したのです。めでたし、めでたし。
さて、これでアンドリアス・ショイフツェリは、地球の新たな主人公としての地位を確立できたのでしょうか?
ヴォルフ・マイネルトの記念碑的労作「人類の没落」によると、人類に対するアンドリアス・ショイフツェリの優位性は、その種族としての同質性にあるとされています。民族や国家に分裂して相争う人類に対し、山椒魚にそういった愚かな性質は無いそうです。
しかし、「山椒魚戦争」の著者による自問自答では、アンドリアス・ショイフツェリにも民族的な分化が生じ、人類の愚を繰り返す可能性が綴られています。
陸地の水没と海底の平坦化による生態系破壊――といった、二十世紀末的発想による山椒魚の未来予測は、時代的制約から語られることはありません。しかし、それ以外にも人類に刻印されてきた、数限りない悪癖を模倣するものには、明るい未来は約束されていないようです。
全世界の勤労山椒魚の諸君! 偉大な宣言が発せられた。さあ、武器を手にすべての陸地を水没せしめよ。
山椒魚は、鎖の他に失うものを持たない。彼らが獲得するものは世界である!
万国の山椒魚、団結せよ!
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