アンドリアス・ショイフツェリ ポスター
山椒魚シンジケート
新中國版書集
解説
これは、「山椒魚シンジケート」が独占販売する水中作業用山椒魚、「アンドリアス・ショイフツェリ」の宣伝ポスターです。
アンドリアス・ショイフツェリは、知性を持ち、人間が提供する道具や武器も扱うことができる、優れた山椒魚です。スマトラ島近くのタナ・サマ島で細々と生息していたところを、カンドン・バンドン号のJ・ヴァン・トフ船長が発見。真珠の採取と交換に、ヴァン・トフ船長によって近隣諸島へ生息域を拡大していきました。
ヴァン・トフ船長死後、増殖したアンドリアス・ショイフツェリを労働力として活用することを、出資者でMEAS社社長でもあるG・H・ボンディが発案、山椒魚の販売・飼育・輸送を独占的に手掛ける「山椒魚シンジケート」を設立しました。
以降、アンドリアス・ショイフツェリは全世界に販売され、港湾工事から埋め立て、海底要塞の建築、さらには海岸線防衛のための軍事利用と、活躍の場と生息数を爆発的に拡大させていきました。この結果、アンドリアス・ショイフツェリのための農・工業製品の生産も増加、国を問わず人類の産業もアンドリアス・ショイフツェリへの依存度を高めていきました。
そうした「山椒魚時代」の栄華もつかの間、進化の階段を駆け昇り、膨大な人口を抱えるに至ったアンドリアス・ショイフツェリは、チーフ・サラマンダー(山椒魚総統)の下、生存圏拡大のために海岸線の拡大を要求、すべての大陸で陸地の水没事業を推し進めていきます。
ここに至っても人類は、自国の権益擁護に固執して結束することができず、一方で山椒魚依存経済を維持するために、アンドリアス・ショイフツェリへの食糧供給だけでなく、水没事業への資材販売を止めることはできませんでした。
――という、チェコの作家、カレル・チャペックのSF小説「山椒魚戦争」から思いついた、ポスターです。この小説は、中学時代に読みかけ、たしか途中で投げ出していたような気がします。エレンブルグの「トラストDE」とともに、早川書房「世界SF文学全集」に収録されていたと思いますが、その「トラストDE」を最近再読し、この機会にと思い出して、今度は読み切りました。
個人的には、山椒魚は好きな動物です。ポスターのアンドリアス・ショイフツェリは、まったくの想像で描いたため、トカゲに近くなってしまったかもしれません。ちなみに山椒魚は、カエルと同じ両棲類です。
なお、これらのポスターはCorelDRAW X3のみで制作しています。
以下に、労働者としての山椒魚に呼びかけるポスターも掲載しました。まあ、冗談ですけどね。また、「山椒魚戦争」サイトも制作してみました。