トラストDE

トラストDE

トラストDE

拡大 その1

拡大 その1

拡大 その2

拡大 その2

拡大 その3

拡大 その3

解説

このイラストは、プレゼンテーション資料の見本として作成したものです。

どこかで、似たようなデザインを目にした方もいるかもしれません。そう、CorelDRAW Graphics Suite X3の販促パンフレットに、小さく同様のイメージが掲載されているはずです。

もちろん、このデザインは、その“盗作”ではありません。もともと、パンフレットのものも私が作ったのですから。この作品は、パンフレット用のデザインを部分的に変更し、内容を入れ替えて作り直したものなのです。

“プレゼンテーション”の内容は、「トラストDE」の組織構成をグラフィカルに表わしたものです。

中心の円環には等高線効果、中心の円グラフにはドロップシャドウ、円の中央にはブレンド効果で、立体感を出しています。

左上のボタン風リストは、スポイトツールを利用したグラデーション塗りつぶし、ブレンド、透明効果、ドロップシャドウなどを使っています。細かいところでは、X3の新機能、「フィレット」も利用しました。

右下の円周上の文字は、「テキストのパス結合」で配置し、分割したドロップシャドウにテクスチャ塗りつぶしを適用することで、水か氷のような光彩を付けてあります。これもX3でなければできません。

まあ、これは、イリヤ・エレンブルグの小説「トラストDE」(註1)に基づいた、もちろん架空のお話です。この小説は、中学時代に読んだのですが、最近ふと思い出し、再刊されていたものをたぶん28年ぶりぐらいで、読み直しました。そして、トラストDEの組織図が頭に浮かび、制作してあったデザインに当てはめてみた、という次第です。

デザインの配色は、私の感性に似合わず美しく仕上がったと思いますが、「トラストDE」は気の滅入るような暗い風刺小説です。海苑社版の追記には、以下のような解説がありました。

今日のヨーロッパの経済危機や、ソ連の崩壊を予言したという意味において、また歴史書の体裁を取った実験的な文学的手法において、現代のテキストと言っても、ほとんど違和感を感じさせないだろう。

しかし、ヨーロッパは生き延び、“ロシア”もこの本で暗示されたとおり、経済発展を続けています。「トラストDE」で描かれたような状況は、欧州よりも今日のアフリカで現実化しているような気がします。そして、欧州にしろ米国にしろ、これらの国々を支配する連中の本質が、エンス・ボートのような人物を通して醜悪に炙り出される状況は、21世紀の今日も変わっていないでしょう。

ただ、“フェニキアの王女”に対するエンス・ボートのアンビバレンスな恋愛感情には、どこか惹かれるものを私が感じたのは、28年前と同じでした。

まあ、そんなことを考えながら、作ったデザインなのでした。


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脚注
註1
「トラストDE」とは、1920年代にエンス・ボートという人物が、米国の資本家に拠出させた資金によって設立した秘密組織で、表向きは「デトロイト建設トラスト」として橋梁建設などを業務としています。
しかし、欧州に314の出先機関と18,670人の勤務員を有し、「DE」の頭文字が付く企業、トラスト、政治結社などを操作していました。
特にフランス政府をフェリクス・ブランデヴォ首相を傀儡として操り、フランスを含めた欧州全国家と民族を、12年という歳月をかけて1940年までに滅亡させました。
エンス・ボート自身も同年9月18日に、最後のヨーロッパ人として死にました。