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黒住浩司 Webサイト

効果とマージモードによる絵画調表現

内容

はじめに

「西高 1979」イラスト
絵画風に加工した「西高 1979」イラスト

先に作成したイラスト「西高 1979」を、PHOTO-PAINTを使ってより”絵画”的に仕上げてみした。この記事では、その技法を紹介します。

CorelDRAWからエクスポート

元々のイラストは、CorelDRAWで作成していますが、絵画的な効果の適用はビットマップベースで行うため、PHOTO-PAINT形式のファイル(CPTファイル)に書き出します。効果は主として校舎の部分の適用し、背景の空や、右手前の樹木は除外するので、予めCorelDRAW側でオブジェクトを「」「校舎」「樹木3」の3レイヤにまとめておきました。

レイヤの統合
CorelDRAWでレイヤを3つにまとめる

その上で、エクスポート時に「レイヤの維持」(Maintain layers)をチェックして、CPTファイルに書き出します。

「レイヤの維持」をチェック
CorelDRAWのエクスポートダイアログで、「レイヤの維持」をチェック

エクスポートされたファイルをPHOTO-PAINTで開き、「オブジェクト」ドッキングウインドウで確認すると、レイヤはオブジェクトに変換されていることが分かります。

PHOTO-PAINTのオブジェクトに変換
PHOTO-PAINTのオブジェクトとしてレイヤが変換されている

なお、「空」オブジェクトは、背景(Background)と結合しておきます。

アンシャープ調整

書き出したCPTファイルは、必要な部分を「切り抜きツール」でトリミングし、「リサンプル」コマンドで20%に縮小した後、「用紙サイズ」コマンドで1280×840ピクセルに再度トリミングしています。

これらのうち、「リサンプル」ではピクセルサイズを縮小しているので、若干、画像がぼやけます。そこで、「校舎」オブジェクトだけを選択し、「シャープ化」-「アンシャープ調整」効果を50%適用して、絵柄の輪郭をシャープ化しています。

アンシャープ調整
アンシャープ調整を適用して輪郭を鮮明にする
アンシャープ調整の適用結果
アンシャープ調整の適用結果

この画像をベースにして、絵画風の表現を構成していきます。

トレース等高線

次に、「校舎」オブジェクトを複製して(Object 1)、これに「等高線」-「トレース等高線」効果を以下の設定で適用しています。

  • レベル:127
  • エッジの種類:高い
トレース等高線を適用
トレース等高線を適用

この効果によって、絵柄の輪郭を”線”として取り出すことができます。

トレース等高線の適用結果
トレース等高線の適用結果。絵柄の輪郭が線として取り出される

さらに、このObject 1を、「ガウスフェード」2ピクセルでぼかしたうえで、オブジェクトの「マージ モード」をテクスチャ化、「不透明度」を60%にして、背景の「校舎」に重ね合わせています。

ガウスフェードの指定
ガウスフェードを指定して、線をぼかす
マージモードと不透明度の設定
マージモードと不透明度の設定し、重ね合わせる

この結果、校舎の”染み”のような模様が、より強調されます。

染みが強調された結果
トレース等高線により、染みが強調される

ポスタライズ

次に、「校舎」オブジェクトを複製して(Object 2)、これに「イメージ」-「変形」-「ポスタライズ」効果を「レベル」8で適用しています。

Object 2の作成
「校舎」を複製しObject 2を作成
ポスタライズ効果の設定
ポスタライズ効果の設定

この効果では、絵柄のグラデーションがトーンジャンプし、窓の陰やコンクリートの文様が、強調されます。

ポスタライズ効果の適用結果
ポスタライズ効果の適用結果。窓の陰やコンクリートの文様を強調

そして、このオブジェクトは「マージ モード」を乗算、「不透明度」を80%にして、重ね合わせます。ただし、地面の植物の部分には重ならないようにするため、オブジェクト透明ツールでグラデーション透明をクリップマスクとして適用しています。

Object 2の設定
Object 2の設定。マージモード、不透明度とともにクリップマスクも適用

この結果、窓の影や校舎の模様が、より粗く表現されるようになります。

ポスタライズ効果の結果
ポスタライズ効果による表現。窓の影や校舎の模様が、より粗くなる

ウェット ペイント

次に、「校舎」オブジェクトを複製して(Object 3)、これに「歪曲」-「ウェット ペイント」効果を以下の設定で適用しています。

  • ウェット度:45
  • パーセント:60
Object 3の作成
「校舎」を複製しObject 3を作成
ウェット ペイントの設定
ウェット ペイントの設定

この効果では、絵柄の輪郭が、水で溶け落ちたように崩れます。

ウェット ペイントの適用結果
ウェット ペイントの適用結果。輪郭が溶け落ちたようになる

そして、このオブジェクトは「マージ モード」をテクスチャ化、「不透明度」を60%にして、重ね合わせます。やはり、地面の植物の部分には重ならないようにするため、クリップマスクを使用します。ここでは、Object 2と同じ透明度にするので、「オブジェクト」ドッキングウインドウ上でObject 2のクリップマスクのサムネールを、[Ctrl]キーを押しながらObject 3へドラッグすればコピーできます。

Object3の操作結果
Object 3にマージモード、不透明度、クリップマスクを指定。クリップマスクは、Object 2からCtrl+ドラッグ

この結果は非常に微細ですが、校舎左下の窓のように周囲のグレーが濃い部分では、溶けだした輪郭が薄く重なり、風雨による染みのように見えます。

ウェット ペイントによる表現
ウェット ペイントによる表現。窓枠の下に、微妙な染みを着けている。

スケッチ パッド

次に、「校舎」オブジェクトを複製して(Object 4)、これに「アート ストローク」-「スケッチ パッド」効果を以下の設定で適用しています。

  • 鉛筆の種類:黒鉛(Graphite)
  • スタイル:45
  • 鉛(Lead):75
  • 輪郭:50
Object 4の作成
「校舎」を複製してObject 4を作成
スケッチ パッドの指定
スケッチ パッドの指定

この効果では、絵柄の輪郭が、鉛筆でなぞられたように強調されるとともに、色調も鉛筆でこすったような風合いになります。すなわち、鉛筆でスケッチしたように変換されるのです。

スケッチ パッドの適用結果
スケッチ パッドの適用結果。鉛筆でスケッチしたようになる

そして、このオブジェクトは「マージ モード」をオーバーレイ、「不透明度」を40%にして、重ね合わせます。クリップマスクは不使用です。

Object 4の指定
Object 4のマージモードと不透明度の指定

この結果、絵柄の輪郭線がやや不均質になるとともに、コンクリートの表面もより粗く見えるようになります。

スケッチ パッドによる表現
スケッチ パッドによる表現。輪郭線を不均質にし、表面も粗くする

「樹木3」にも校舎との統一感を与えるため、このオブジェクトを複製し(Object 5)、「スケッチ パッド」効果を適用します。

Object 5の作成
「樹木3」を複製し、Object 5を作成

同じ設定で適用するときは、メニューバー「効果」-「繰り返し」-「最後の効果」コマンドを実行します。

「最後の効果」コマンド
最後に使用した効果は、「最後の効果」コマンドで適用できる
Object 5のスケッチ パッド効果
Object 5にもスケッチ パッド効果を適用する

このオブジェクトには、「マージ モード」をテクスチャ化、「不透明度」を100%を指定して、重ね合わせます。

Object 5の指定
Object 5のマージモード、不透明度の指定

レンズ

色々とオブジェクトを重ね合わせた結果、校舎がやや暗くなってしまったので、最後に少しだけ明るさを「トーンカーブ」で調整します。その対象を校舎部分に限定するため、選択範囲と「レンズ」を使用します。

まず、「校舎」オブジェクトを選択し、メニューバー「マスク」-「作成」-「オブジェクトからマスク」(Mask from Object(s))コマンドで、「校舎」オブジェクトの輪郭形状でマスク選択範囲を作成します。

「オブジェクトからマスク」コマンド
「校舎」を選択し「オブジェクトからマスク」コマンドでマスク選択範囲を作成

次に、校舎関連では最前面にあるオブジェクト「Object 4」を選択、「オブジェクト」ドッキングウインドウ上の「新規レンズ」ボタンをクリックします。そして、「新規レンズ」ダイアログで「トーンカーブ」を選択し、トーンカーブを次のように設定します。

「トーンカーブ」の選択
「新規レンズ」ダイアログから「トーンカーブ」を選択
「トーンカーブ」ダイアログの設定
「トーンカーブ」ダイアログで曲線中央を少し上にドラッグ、画像を明るくする

以上の操作で、「Object 4」のひとつ前面に、トーンカーブのレンズ オブジェクトが作成されます。レンズは、その効果を自身より背面のオブジェクトに対して適用させる、”効果の窓”のようなものです。その効果の設定は、再編集することができます。また、今回のようにマスク選択範囲がある状態で作成すると、自動的にクリップマスクが作成され、その選択範囲内だけに効果を適用する”窓”になります。

作成されたレンズ
作成されたレンズ。選択範囲がクリップマスクになり、その範囲内かつObject 4以下のオブジェクトに、トーンカーブが適用される

以上で、絵画風効果の適用は完成です。PHOTO-PAINTでは、各種効果を適用したオブジェクトを、マージモードを使って重ね合わせることで、様々な表現ができるのです。