三周忌の翌月は、火曜日の21日という“あの時”と同じ組み合わせになった。さすがに六月ともなると、暑さは同じでも、湿度がそろそろ耐え難くなってくる。小太郎にとっても、堪える日々があと2ヶ月以上続くだろう。
気温や湿度のせいとは思えないのだが、小太郎の食欲が以前よりも落ちてきた。大人になって、色々な面で落ち着いてきたのだろうか。食べることは食べるけれど、ガツガツしたところがなくなった。ハナちゃんは、どうだっただろうか? ハナちゃんも三歳を過ぎると、遊び方が落ち着いてきた。家にいるときは、おとなしく寝ていることが多くなった。
しかし、振り返ってみると、小太郎と暮らしている期間ほど、ハナちゃんを見ていたわけではないことに気づく。三歳を過ぎた猫が、どのように暮らしていくのか、僕には初体験の領域に入っているのだ。もう、一日が過ぎていくたびに、小太郎との絆が深まっていく。
今日は夏至。陽射しが厳しくとも、やはり昼間の長いほうが僕は好きだ。明日からは、少しずつ昼間が短くなっていく。九月ぐらいまでは、そのことに気づくことは少ない。しかし、11月にもなると、夕暮れが訪れる速さに気が滅入る。
ハナちゃんとの暮らしの想い出も、少しずつ、その物理的な比重は低くなっていく。季節のように、それが逆転する日は来ない。だからこそ、想い出はますます重みを増していく。
北区の訓練校に出かけるときは、学校近くの住宅街を縫うように遠回りをして歩く。浦和駅から家に帰るときも、ちょっと遠回りをして寂れた商店街の、さらに寂れた脇道を歩く。それらの場所に、時々、白黒の猫が姿を現すからだ。そして家では小太郎と、仲睦まじく暮らしている。