あと1ヶ月で、ハナちゃんの三周忌となる。もう三年も経ってしまったわけだ。すでに、ハナちゃんと過ごした期間よりも、小太郎と暮らした期間のほうが長くなってしまった。小太郎はすくすくと、そして丸々と育ち、今日も元気だ。“小”太郎といっても、もう実年齢は立派な大人。それでも、飼い猫暮らしのせいもあって、今でも子猫のように甘えてくる。野良猫生活を経験し、二年目頃からはすっかり大人になったハナちゃんとは、そこがちょっと違うようだ。もちろん、ハナちゃんも、小太郎も、可愛い猫であることに変わりはない。
講義をしている訓練校でも、四月は新しい生徒にまるごと入れ替わる。昨年度の障害者校の受け持ちクラスは、十人足らずだったけれど、ほんとうに元気がよく、楽しい面々だった。この一年間は、教えていても楽しく充実した日々だった。三月で授業が終わったときは、気が抜けてしまったところもあった。
そこで、僅かの休みの間、浦和市内の全神社を踏破する“探検計画”を立案し、実行してみた。元々、「浦和探検隊」というWebサイトを運営しているので、そのリニューアルも兼ねた計画であり、二万五千分の一の地図などで神社を洗い出し、自転車で市内を駆け巡り、今年初めに新調したデジタルカメラで社殿や境内を撮影し尽くした。
“師匠”と仰ぐ川口浩隊長のDVDが発売されたこともあり、頭の中でそのBGMやナレーションが駆け巡りながらの探検だったが、先日、最後の神社も遂に踏破した。するとやっぱり、気が抜けてしまった。もう、行くべき神社がない。人跡未踏の神社が、ない。というわけで、次の探検目標として、浦和市内の「歩道橋」をすべて踏破しようと思っている。
なぜ歩道橋なのか。ハナちゃんと北浦和で暮らしていた頃、駅の北側にあった、線路を跨ぐ歩道橋の上から市街を眺め、色々な感慨に耽っていたことがあった。ハナちゃんが死んでしまってからも、そこで時々想い出に浸っていたりした。しかし、その歩道橋は撤去され、より使い易い地下道に生まれ変わってしまった。
まあ、歩道橋はバリアフリーからは程遠い公共施設であり、予算の都合さえつけば、様々なところから姿を消していく存在なのだろう。そこが、なんとなく哀愁というか侘び寂を感じさせるので、今のうちにその存在を記録しておこうと思ったしだい。
この探検は、焦らず、暇なときに少しずつ進めていこう。人跡未踏の地が、すぐさま枯渇しないように。しかし、あまりのんびり構えすぎても、ほんとうに残したい想い出が、思うようには残らない、というパラドックスに陥る可能性もあるので、なかなか難しいところだ。
ともあれ、訓練校の授業も始まり、またやりがいのある一年が始まった。その合間に歩道橋を探し、そして来月はハナちゃんの追悼にすべてを傾けよう。