先週に引き続き、今日は友人と埼玉県内の探索に出かけた。今回は自転車ではなく、久しぶりに友人の車でドライブだ。基本的に、車での遠出は、埼玉県内か隣接する都県あたりまでしか足を伸ばさない。僕としては、万が一、遥か彼方の場所で事故にでも遭い、小太郎と会えなくなるような事態は避けたいからだ。まあ、家から数百メートルのところでも、事故で死んでしまったら同じことなのだが、それでも家から離れるにしたがって、落ち着けない気分になる。
今回の目的地も、行田市のさきたま古墳群と、羽生市の埼玉水族館という、県北東部エリアの範囲内だった。地図でさきたま古墳群の近くに「古代蓮の里」という場所も見つけたので、そこも探索先に付け加えた。最初に到着したのも、この「古代蓮の里」。広い敷地の公園内に、蓮や水生植物の池を配置した、長閑な場所だった。蓮は、時期を逸したため、ほとんど花は咲いていなかった。それでも、白やピンクの花をいくつかみかけた。ホテイアオイの淡い水色の花が、真っ盛りだった。
さきたま古墳群では、稲荷山古墳などに登る道が、遺跡保護のため閉ざされていた。そのため、下から見上げることしかできなかった。たいていの古墳は、柔らかい芝生に囲まれていて、その感触を味わいながら歩くだけでも楽しい。鉄剣で有名な稲荷山古墳や、規模の大きい二子山古墳は、手入れが行き届いているが、公園の隅にある奥の山古墳や鉄砲山古墳は、草ぼうぼうの荒れた風情だった。しかし、そのほうが、朽ち果てた権力者の遺物を表すのにふさわしいだろう。
資料館も覗いたが、いちばんの収穫は、道路沿いの土産物屋で購入した「遮光器土偶」のレプリカだ。九年前に自転車で訪れたときにも、ここで遮光器土偶を買い、イラストのモデルにしたことがある。この店のものは、ハンサムな顔立ちなのだ。さきたま古墳群は、その名のとおり古墳時代の遺跡なので、縄文時代の遮光器土偶は、考古学上は無関係。しかし、そんな堅いことは言っていられない。土偶は、顔が命。首筋から肩にかけてのラインも、優美であることが条件だ。
埼玉水族館は、海なし県である埼玉だけのことはあって、淡水魚を中心に展示している。ただ、巨大な鯉やイトウなどが、小さな水槽に入っていると、ちょっと可哀想になる。庭には、少なくとも水槽よりは大きな池があり、そこでも鯉が餌を求めて水際で跳ね回っているのだが、彼らのほうが幸せそうだ。また、館外の公園にも、大きな池がある。そこには、僅かにおたまじゃくしが見られただけで、魚の姿はあまりない。水が濁っているので、見つからないだけかもしれないが、ここにも放してあげればいいのに、と思ってしまう。池の周りには木道が整備されていて、散策する人間にとっては、素晴らしい環境なのだが。
今回訪れた三つの場所とも、芝生が広く、そんなに人は多くなく、僕にとっては理想的な公園だった。残念なことは、自転車では、そう簡単には行けない距離にあることだ。ほんとうだったら、小太郎を連れて、のんびり午後を過ごしたい。しかし、猫を連れて行くには、自転車でも10分以内が限度だろう。これらの公園では、無理な話だ。まあ、行田や羽生に住みたいとは思わないが、浦和市内でそうした公園の近くに引っ越したいものだ。
家族は、もう猫だけで十分。狭くてもよいからそんな所で、ハナちゃんの遺灰と、元気な小太郎と、凛々しい遮光器土偶に囲まれて、ひっそり暮らしてみたいものだ。