桜の花の季節は終わり、葉桜、そして新緑で街角が彩られるようになってきた。午前中で雨は上がり、昼過ぎには青空が広がり太陽も顔を出したので、北浦和まで用事を済ませに出かけた。最近、度々立ち寄っている北浦和。想い出の地も、こうちょくちょく出向いては、有難味が薄れてしまうかもしれない。
そこで、かつての駅前散歩コースを歩いてみた。以前の家の前から、ハナちゃんの事故現場を通り、北浦和公園へ。噴水をぐるっと回って埼大通りに。4月の終わりから5月にかけて、この通りの欅並木は一年の中で最も美しい。数年前、枝を剪定され貧相になってしまったことがあったが、勢いを取り戻し、路をトンネルのように覆っている。いつものように通りのCDショップに入る。ありそうにもないThe Kinksの新譜を探してみたが、旧譜すら1枚も売っていなかった。
この店の横から、北浦和銀座商店街へ曲がる。都内の人ごみ、雑踏は大嫌いだが、ここの程度であれば、逆にほっとする。人間の感性なんて、いい加減なものだ。商店街の突き当たりは、ショッピングセンター。倒産も危ぶまれた会社だが、何とか持ち直したようで、食品売り場は23時まで営業するとの横断幕が出ていた。僕が出て行くと、この街は便利になるようだ。
そして県庁地方庁舎の横へ。以前、花壇の中で野良猫が暮らしていた。ハナちゃんが生きていた頃は、「家にはもう猫がいるからゴメン」とつぶやきながら通り過ぎた。ハナちゃんが死んだ後、この猫を拾おうかとも思ったけれど、決心が付かないうちに小太郎がやって来た。今、猫たちがいたところには、「物を置くな」というお役所風の貼り紙がある。ちょっとだけ、お役所を弁護すると、「物」とは餌のことで、猫を物扱いしているわけではないようだ。
最後に線路に架かった歩道橋を渡り、平和通り商店街から駅前に出る。以前は、ひとつ南寄りの橋を使っていたのだが、老朽化のため取り壊されてしまった。あの橋の上から、眼下に街並みを眺め、「ここに僕とハナちゃんが住んでいるんだな」と、のんび り生活感を噛みしめていた。懐かしい、というほどには遠くない想い出だ。