業者に依頼して、引越しよりも先にコピー兼FAX兼プリンタ機を搬出してもらった。業務用の機器にしては、コンパクトな筐体だと思っていたが、いざ無くなってみると、部屋の中がけっこう広くなった。出来た空きスペースでは、小太郎が跳ね回っている。
ハナちゃんが現れたときは、ひとつ前の機種をやはりリースで使っていた。こちらの方が大きく、やはり部屋を圧迫していたが、どんな形をしていたのか、細部まではよく覚えていない。過去に撮影したハナちゃんの写真にその一部が写っていて、「ああ、あの頃はまだ旧いコピー機を使っていたんだな」と、時の流れを感じるだけだ。
現在の機種に切り替えるとき、当然、コピー会社の営業マンとSEの人たちが部屋に搬入してくれた。ハナちゃんはそれに驚いて、ロフトの奥に逃げ込んだ。その前の、営業マンとの契約に際しては、ハナちゃんはたしかロフトに昇る梯子の上でじっとして、ことの成り行きを見守っていた。
そしてハナちゃんは、コピー機の上をよく歩いていた。時には、シートフィーダの上で寝転んでいた。ハナちゃんの体重は軽い方だったけれど、足で踏んでコピー機のスイッチを入れてしまう。たびたびこの罪のない悪戯を繰り返すので、スイッチは接触不良気味になっていた。また、僕の出かけているときに電源が入ってしまうのは怖いので、プラスチックの小さな箱をテープで留めて、カバー代わりにしておいた。
コピー機の後ろの壁には、1995年の「浦和レッズ」ポスターが貼ってあった。栄光のメンバーが並ぶ大事なポスターだったので、ハナちゃんはそれに手を触れることはなかった。しかし、小太郎は無邪気にそれを破こうとする。仕方なく、このポスターは外してしまった。飾りのなくなった壁、そして部屋の中にポッカリ空いた空間。もうすぐ、この部屋ともおさらばだ。