雨が降ると、日増しに冬が近づいていることを実感させられる11月。今週の前半はまだ、昼間は気温も高かった。ハナちゃんとの出会いから3周年の日もそんな感じで、ちょっと実感が湧かなかった。
11月の始まる今日はどんよりと曇り、日中も寒かった。そう、曇った空、もう1枚上着を着ておけばよかったと後悔させられる北風、目覚めがくしゃみとともにやってくる朝の冷気。これが11月だ。冬の訪れは、10月でもちょっとした空気の中に忍び込んでいる。しかし11月ともなると、それはもうあからさまだ。葉っぱも枯れている。冬は大嫌いな季節だし、寒さは苦手だ。所謂「鉛色の空」は、目を逸らしていても気分を重くする。早く春の訪れを待ちたいが、それも呆気なくやって来て、油断していると夏を通り越し、また冬の扉の前に立たされる。
しかし、ハナちゃんとの出会いの頃は、冬を前にした重苦しい空の下だった。猫は毛皮があるから大丈夫かな、と思いつつも、寒風にさらされるハナちゃんが心配だった。雨の日だってある。そんな中、少しずつ、少しずつ僕に近づいてきたハナちゃん。結局、ハナちゃんが僕に慣れるまでには一冬の間を費やした。見た目にも愛らしい子猫の時期でもあったので、その冬は僕にとっては珍しく思い出深い季節になった。僕自身が、「ちょっとこの子猫を助けてやろうかな」という中途半端な気持ちから、ハナちゃんの一生涯に付き合おうと真摯に襟を正すまでに変わった、短いけれど大事な時間だった。
今日のような肌寒さを感じ、雨混じりの曇り空を眺めると、僕はあの頃を思い出す。たった3年前の出来事。たった一冬の出来事。そのあとで、ハナちゃんと一緒に過ごした冬は2回きりだ。冬を越すたびにハナちゃんは大きくなり、可愛くなった。僕は、嫌いな冬をもっと迎えたかった。
「今年も暖冬だったらな」と思いつつも、この冬の感覚に加わった"新しい"懐かしさを、僕はかみしめる。