ハナちゃんが死んで4ヶ月。初めて「その日」に日記を書くのを怠ってしまった。ごめんね、ハナちゃん。
ハナちゃんが死んで以来、僕は日付をきちんと頭で刻んできた。しかし、今月は「今日が何日なのか」をあまり意識しないで暮らす、普段の生活に戻っていた。小太郎が僕の生活に大きな位置を占めるようになり、やはりハナちゃんの存在は相対的に低下してしまったようだ。まあ、言い訳を付け加えれば、昨日は父の入院であたふたする母を手伝わなければならなかったので、それで頭が回らなかった。僕は、孝行息子とはお世辞にも言えない存在なので、老いが目立ってきた母の力になったとは思えないが。
そこで今日も実家に小太郎を連れて顔を出し、母の話し相手をした。何より安心したのは、決して猫好きとは言えない母が、小太郎と仲良く遊んでいたことだった。放蕩息子にはできないことを、小太郎が手助けしてくれるかもしれない。人慣れした小太郎はこんなところで役立ってくれるが、ハナちゃんにそれを期待するのは無理だっただろう。ハナちゃんには、人間の血縁など関係ない。僕の肉親だろうが友人だろうが、お構いなしに人間が嫌いだった。人を見ると怯え、警戒心を捨てることはなかった。
小太郎の八方美人も可愛いけれど、ハナちゃんの頑なな人間嫌いが、僕は好きだった。そして、僕こそがハナちゃんに選ばれた唯一の人間であるという、満足感があった。ハナちゃんを実家に連れて行っても、初めて僕の部屋に入ったときのように隅に隠れてしまって、苦労させられたことだろう。
野良猫の“気概”をいつまでも捨てなかったけれど、僕との絆だけは大事にしてくれたハナちゃん。そして小太郎との今の絆も、ハナちゃんが譲ってくれたのだ。僕はハナちゃんに一生、感謝し続けたい。
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