猫の目ほど、美しいものはない。ハナちゃんの目は、澄んだ黄色の中に黒い瞳があった。いわゆる「猫目」とは、縦長に縮んだ瞳のことだ。もちろんハナちゃんの瞳も、明るいところでは猫目だった。家の周りで僕を待っているとき、眩しい陽射しの下で出会ったハナちゃんは、細い瞳で僕を見つめていた。
夜になると、猫の瞳は開き、人間と同じように丸くなる。黒い、その中には神秘的な緑の光を宿している、大きな瞳。でも、ハナちゃんの瞳を写真に撮る機会は少なかった。ハナちゃんは、すぐレンズから顔を背けてしまった。撮れたとしても、あの美しさのすべてを封じ込めることはできなかった。
ほんとうに、猫の目は澄んでいる。それはガラスよりも繊細で、驚くほどの透明度を湛えている。地球上にあるどんな宝石も、猫の目にかなうものはない。ハナちゃんが死んだとき、目は生きているかのように開かれたままだった。すでに体が硬直していて、その美しくも哀しい目を閉じることができなかった。生命の光のない、ただ美しいだけのハナちゃんの瞳。死んだあとでも失われない美しさは、しかし、かつて僕のことを見つめていた愛らしさとは異質のものだった。それは、言ってみればただの宝石になっていた。
この数日、僕はハナちゃんのイラストを描いている。カメラでは写せなかった肝心の瞳を、美しく描くことが僕にはできる。構図は撮りためた写真から利用し、そこに大きな瞳を描き加えている。しかし、あのハナちゃんの愛らしさを表現することが、まだ僕にはできない。今描いているのは、僕が最後に見たハナちゃんの目だ。「美」は、寂しさだけを湛えている。
愛らしさ、つまり優しさを描くことが、いつかはできるだろうか?